読書のお話 その4

  レティシア・コロンバニの「三つ編み」を読みました。フランスで85万部を突破し、世界32言語での翻訳の決定した評価の高い作品です。インドの寒村で暮らすカーストの下層民、不可触民の女性、一日中、一生、他人の糞便を素手で拾い集める仕事をする運命にある女性と、シチリアのパレルモで他人の髪の毛をカツラ用に仕立てる職人の家の娘として生まれてきた女性と、カナダのモントリオールでエリート弁護士としてのし上がってきた女性。三人が三様に過酷な運命に翻弄され、もがき苦しみ、その果てに、やがて三人の人生が 重なり合うことになります。女性だからこそ書ける女性の強さを、簡潔な文章で書ききった秀作でした。やはり、女性はおそるべしなのだ!

レベッカ・ソルニットの「迷うことについて」を読みました。訳者あとがきで述べられているのですが、原題の中で使われている〝Getting Lost”は「人間が失われるものとなること」、「人が迷い、紛れ、失われ、消え、見えなくなること」だと書かれています。「人間だけではなく、物や動物が失われることにも触れられている」、と 。最初からなにか違和感のような、しっくりこない思いで読んでいたのですが、途中で著者が女性であることが分かって、合点がいったのです。私には外国人の名前が女性なのか男性なのかという知識すらなかったのですから。著者は「物事は本性からして失われるものであり、それ以外の帰結はない」と述べています。とても繊細で、なにか研ぎ澄まされた直感的な表現が女性らしく感じました。省察のなかでとても象徴的なもの、隔たりの青〝The Blue of Distance”。「世界はその際(きわ)や深みで青を帯びる。この青は迷子になった光の色だ。スペクトルの青側の端に位置する光は、大気や水の分子によって散乱するために太陽からわたしたちのところまでまっすぐには届かない。水にはもともと色がなく、浅い水は底の色をそのまま透き通らせる。しかし深みは散乱した光線に満たされ、水が澄んでいれば澄んでいるほど濃い青色になる。空が青いのも同じ理由だ。けれど地平線の青、空に溶けてゆくような地表の色はもっと深い色をしている。現実でないような、憂いをたたえた、はるかな見通しのいちばん先に見える青。隔たりの青。わたしたちまで届くことなく、その旅路をまっとうできなかった迷ってしまった光。この世に美を添えるのはその光だ。世界は青の色に包まれている。 もう長い間、視界の限界にみえる青に心を振り動かされていた」 私的な色彩が濃い作品であると訳者がいうこの省察は、しかし、あまりにも美しい悲しみに満ちている。

ミヤギフトシの「ディスタント」は何で紹介されて読み始めたのだろうか? 前半三分の二を四苦八苦しながら、まあ、青春小説かなと思いながら、ところどころにホモセクシャルな雰囲気を感じながら読んではみたのですが、最終章のストレンジャーは飛ばし読みもいいところ。やはりホモセクシャリティーが現在的でファッショナブルな雰囲気なのかなあとそれくらいしか読み取れずに、読み切れなかった著作でした。本当は沖縄の置かれた位置からもがきながら這い出そうとする若者を描いているのかも知れませんが、私は読み通してもいないのですから、なにもコメントはできません。若い人たちがこれを読んだらどのように感じるのだろうか? とちょっと気にはなるところですが……!