展覧会のお話

 前川秀樹さんは今や日本を代表する木彫作家の一人だと思います。身近な伐採木や流木を自在に使って、小さな人間、10cmからせいぜい50cmくらいの高さでしょうか、女性の魅力的な像が多いと思います。広島市のギャラリーたむらで催された、前川秀樹 像刻展を師走の初旬に見に行きました。多くの作品は、東京で催されたwitch, 魔女をテーマにした展覧会用の作品でした。「魔女は特別な異界の存在ではなく、ごく一般的な、けれどどこかに一般の人々と違ったところのある中世の女性たちじゃないかな」と前川さんは言われていました(ちょうど作家の来廊している日に見に行きましたから)。「だから、魔女に付けた名前は、(聖書やギリシャ神話なんかを敢えて連想させない)今でも使われているようなごく一般的な(ヨーロッパの?)女性の名前にしてある」のだそうです。どれも、魅力的な作品でしたが 、家内もこの作品なら欲しいなというものがありました(既に売れていましたが)。前川さんが小さな像を彫る一つの理由は、手ごろな値段設定ができるから、なるべく多くの人に買ってもらい家庭で飾って欲しい、という意図があるそうです。前川さんにもお話したのですが、前川さんの木像からは人形から感じるような魂を感じます。 一瞬の動作を切り取った、センス溢れる女性たちに、人形のような怪しさを感じるのは、その大きさにあるのではないかと、私は思います。ロダンなんかの大きなブロンズ像や巨大な仏像なんかに、怪しい霊魂を感じることはあまりありませんので……。形、彩色、雰囲気、斬新で大胆な発想、どれをとっても、乗りに乗っている作家であることは間違いありません。この作品展にも、名古屋や東京のファンの方たちを含めて、開店前から多くの人たちが並んで詰めかけたそうです。

H26 10月某日、京都国立博物館に鳥獣戯画を観に行きましたが、開館直後にもかかわらず、長蛇の列、炎天下の待ち時間150分と聞いて、あっさり諦めました。ディズニーランドじゃああるまいに! そこで、せっかくだからと、平成知新館オープン記念 「京へのいざない」展(待ち時間なし)を観ることにしました。気持ちの良い真新しい新館で、この展示会のなんと圧巻だったことか!!菅原道真の経管だの、豊臣秀吉直筆の書だの、雪舟、狩野永徳、長谷川等伯の日本画だの、まあ、国宝のオンパレードで、社会科の教科書で見たような日本一級の美術品の宝庫だったのです。大満足。堪能しました。伝統工芸に出てくる宝相華や唐草なんかの定番の紋様の日本のルーツはこれだったのかと、日本の伝統工芸士の皆さんの目指していたのは、これだったのかと、納得したのでした。よい目の保養ができました。涼やかな新館のなんと気持ちの良かったことか!!!