かやだの思い

私は、単に歯を治したいのではありません。

歯やあごや口腔に関連した治療やケアを通して、患者様の心が健やかに、穏やかになることによって、患者様が幸福な人生をおくられるようになることのお手伝いをしたいのです。

患者様の幸せな人生が目標なのです。

それが、私の生きがいの一つともなります。

私の歯科医療の礎となる口腔外科というのは、お口に関連した疾患を、外科的な知識や診断や技術によって治していこうとする医学の一分野です。

基本となる、大前提が、「医学の一分野」であるということです。医学というのは、人間を扱うものです。歯や顎などの硬組織を扱っても、歯科というものも医学でなくてはなりません。これが、私が一番強調したいことです。

歯を削って、詰めて、「いっちょ、あがり!」というのは、それが、歯だけをみて患者様をみていないのならば、医学とは言えません。

患者様がいくら痛がって苦しんでも、あたかも自分の満足のためだけのように、黙々と歯だけをにらんで、削ったり詰めたりしている行為は医療ではないのです。

われわれ歯科医と呼ばれる者たちが、その名のとおり医者であるためには、患者様の悩みや痛みや苦しみを、全人格として受け入れ、診断し、考慮し、時には治療し、時にはケアし、時には励まし、時にはじっと側で手を握っているだけ・・・・・・。

歯科医の施す、医療行為によって、患者様が慰められ、癒され、満足されなくてはなりません。幸せな気持ちになり、幸せな人生だと感じてもらわなくてはなりません。

もう一度言いますが、歯科医の自己満足のためだけの行為は、医療ではないのです。

私の歯科治療は、口腔外科という医療に裏打ちされたものです。生身の人間を扱う、困難な作業です。

私は、13年間大学病院の口腔外科学講座に所属して、口腔癌の患者様や、交通事故などで顎を骨折した患者様や、唇や顎の骨に奇形をもった患者様や、感染症で顔の腫れあがった患者様や、骨の中に風船のような害があって要らない袋のできた患者様や、親知らずが腫れて抜かなくてはいけない患者様など、顔や口腔に関連したさまざまな病気で、悩んだり苦しんだりしておられる患者様を、外来の診療室や、入院している病棟や手術室で、治療するチームの一員として過ごしました。

私は、歯の痛みを歯だけをみて、解決しようとは思いません。歯にきている神経や血管とのつながりを考えます。歯の回りにある歯茎や骨とのつながりを考えます。歯の周りの顎関節や上顎洞や鼻腔や唾液腺や筋肉とのつながりを考えます。そして、歯をもっている患者様の心とのつながりを考えます。

私は、頻繁に薬を使います。内服薬や外用薬や、時には点滴注射もおこないます。薬を患者様に投与するという行為には、薬のことをよく理解して、その薬の副作用が患者様の利益を下回るという確信がなくてはいけません。薬によって患者様が助かったと感じられる結果が予期されなくてはいけないのです。

私は、積極的に外科的治療、手術療法も行います。そのためには、安全に成功裏に手術を終えられるという確信がなくてはいけません。患者様が緊張のあまり、あるいは痛みや恐怖のあまり、気分が悪くなったりしないように、適切な配慮と施術ができなくてはなりません。万一、患者様の気分が悪くなったり、全身的な容態が変化したとき、迅速で適切な処置を施すことができなくてはいけません。自分の技術や手術的な治療の限界もきちんと認識していなくてはいけません。

私は、大学病院の医学部の麻酔科で100例をこえる患者様に麻酔をかけ、歯学部の麻酔科で50例をこえる患者様に麻酔をかけるというトレーニングを受けました。患者様の全身的な状態が変化したときに対応するための基本的な訓練を受けることができました。

私は、なるべく薬をつかわず、なるべく手術をせず、あるいは、なるべく歯を削らず、なるべく歯の“神経”を取らず、なるべく歯を抜かないように気をつけています。患者様とお話しするだけで、他には何もせず、患者様の安心や治癒すらが得られることもあるのです。

私は、マウスピースを使った治療も積極的に行います。口があかない、関節が痛い、音がするといった顎関節症の治療のときもそうです。歯をぎりぎり音を立ててかみしめる、ぐっとくいしばる、かつかつと音をたてる、歯ぎしりの治療のときもそうです。そして主に広島市西区東観音の川本内科・呼吸器内科クリニックの川本仁先生のご紹介を受けて睡眠時無呼吸症候群の患者様の治療をするときもマウスピースを作ります。

歯科医にもいろいろな歯科医があっていいと思います。職人技のように入れ歯の治療の上手な歯科医もいます。歯並びを芸術的に美しく治すのが上手な歯科医もいます。

私は、いつでも必ず、一人の患者様という生身の人間とお付き合いしているのだということを大切に思う歯科医です。

私は、単に歯を治したいのではありません。

歯を治したり、親知らずを抜いたり、腫れた歯茎の膿を出してお薬を投与したり、顎関節症にマウスピースを入れたり、睡眠時無呼吸症候群の患者様にマウスピースを作ったりすることで、患者様の悩みや苦しみや不安を取り除いて、豊かで幸せな時間を取り戻し、幸福な人生だと感じられるようになるお手伝いをしたいのです。

それが私の生きがいの一つにもなるからです。