読書のお話 その8
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デーリン・ニグリオファの「喉に棲むあるひとりの幽霊」を読んだ。アイルランドの詩人、作家。詩人として評価の高い彼女の散文デビュー作で評価され賞も受けている。ニューヨークタイムズなどでも2021年のベスト本に選出されている。「力と魔法にあふれた回顧録と文学的探究の溶解……ニグリオファは女性たちの人生に生じた溝、沈黙、謎に自らを深く調和させている。本書が明らかにするのは、私たちは愛するとき、どれほど深く愛するのかー子供、恋人、そして詩をーそしてそれが私たちを、内側からどれほど変容させるか、だ」(ニューヨークタイムズ のニナ・マクラーレンの評)1773年に殺害された夫のもとに馬で駆けつけ、彼の血をすくって飲み、哀歌(クイネ)を歌ったアイリーン・ドブ・ニコルという実在の詩人と作者が再会する。アイルランドの「クイネ」は 「死者に対して泣き叫んだり、悲しんだり」もしくは「哀歌を歌う」などの意味を持っているらしい。作者のことばにならないうなり声、泣き声、喘ぎ声とドブ・ニコルのクイネが響き合い、「わたしはここに確かにいるんだ」と叫んでいる。 |

